乾 杯



それから、正月と言うか行く日程となっている元日までは、何だか彼と再会する為に山村へ向う事を意識していたのではなかったかと思う。
特に年末も、大晦日に近づいていった頃には、冷え込んでいただけでは無くて天気も不安定なイメージを持たされていたと思うけど、 テレビなどで週間予報を見てみると正月などは雨のマークが続いていて、当日は果たして行ける状態となっているのだろうかと、不安な意識も持たされてしまっていた。

更に、あの山村は冬の気温はかなり低く、年末年始の頃だと高知市が雨の場合には雪が降っている可能性がかなり高い。
故に、もしも当日雨が降ってたりした場合、山村へ車で行くのも決して安全では無いと考えなければならない。 また、弟には後から予定が入ったらしいのだが、翌日の2日にバイク仲間と年初めのツーリングに行く事が決められてしまったらしいのだ。
この事を知った時には、思わず弟にはかなりきついスケジュールになるだろうなと思い、 元日に山村へ行くのはカットした方がいいのかもしれないとも思ってしまった。僕自身が最初に彼に会いに行くのは春の予定だったから。
だが、元日よりも2日の雨の確率高く、また降水率がある程度までに達している場合にはツーリングは中止となると決められているらしいし、弟もツーリングよりも山村へ行く事の方にかなり乗り気の様だったので、結局は決行してもいいかなと決断してしまったが。

そして、当日の元日これもまたラッキーな事に、予想に反して全く雨は降ってはいなかった。
それどころか、逆に少しだが晴れ間も見えるくらいのいい天気だったのだ。元日の恒例の事を済ませて、2人で出発したのは午前11時前後だったろうか。また、元日という事で、恐らく飲食店などもどこも営業はしていないだろうと考えて、山村へ向う途中でいの町にあったコンビニで昼食として食べる物を買って、 当然昼も過ぎていた頃だったろうと思うけど腹も減ったという事で、向う途中でそれをしっかりと食べて、改めて山村へと向う。
そして、ある地点で長い上り坂が始まる。

ちょっと前までは、この上り坂を上り切り、一つのトンネルを抜けると山村へ辿り着いたという事となっていたのだが、今は他村長と合併されている為に、今は辿り着いた感じがするといった感じだろうか。
また、この上り坂に関して弟と語り合っている時に、何故か川端康成の「雪国」が出てきたよ。弟によると、過去にトンネルを抜けた時に、まるで小説と同じ様にトンネルに入る前とは景観が一変して、 雪景色となっている事があったらしいのだ。
僕は、勿論冬に山村へ向うなんて事は行なった事が無かったからその様な体験は無かったが、その様な事もあるんだなと思いつつ、そのトンネルを抜けると、ちょっと驚いた事に入る前とは異なり路面が濡れた状態となっていたのだ。この時、思わず雪が降っていたのかもしれないなと思ったが。
また、この時期には、 本当に小説と同じ様な事があるのかもしれないなと思ったりもしてしまった。

彼の実家に辿り着いたのは、午後1時過ぎだったろうか。
外にはおばさんがいて、何やら用事をされていたので、すぐに2人で離れた所に車を置く事で気を合わせて駐車する。
そして、おばさんのとこにゆっくりと近づいて行って、突然に新年の挨拶をさせてもらった。おばさんは、突然の訪問者に幾らか驚かれていたみたいだけど。そして、その時には丁度彼も外に出ていたみたい。彼も驚いたようにして、すぐにやって来たよ。
それからは、3人で昔から最近の事まで色々な事を立ち話をしてしまっていたよ。だが、かなり話が進んだ所で、一番薄着だった彼が寒さを感じる様になっていたのだろうか、突然に家の中に入らないかと言い出すではないか。
勿論、遠慮などしない。彼の家に入るのも何年ぶりだろうと思いつつ、彼に連れられて部屋に入っていき、そこで男3人がコタツに入る。

そして、その様な場面となると、やはり酒がなければとなってくるのだろうか。大缶と言ったらいいのだろうか、1缶500mlのビールを持って来てくれたのだ。だが、この時飲んだのは僕と友人の2人の男だけだ。
当然の事だが、運転している弟には飲ませるなんて事は出来なかったから。その代わり、弟にはおばさんがお茶を用意してくださって、一応納得してそれを飲んでいたけれど。
ただ、やはり弟も幾らか酒は好きなのではないかと思うので、 目の前で思いっきり飲んでいる奴を2人も見ている時にはどの様な気持ちでいたのか、後から聞く事も出来なかったし、今も分からないよ。といって、無理矢理聞きだす必要もないだろうと思うけどね。

そして、彼と乾杯をして飲み始める。僕は飲むのは本当に好きで、調子に乗って呑んでもいけないなと思いつつゆっくり飲んでいたつもりだったのだが、何だか彼に比べるとあっという間に飲み切ってしまっていたみたい。
彼は驚きながらも、僕が酒が好きな事は勿論昔から知っていて、僕は一応遠慮したのだが、「もう一本飲みや」とすぐに同じ物を持って来てくれてしまったのだ。持って来られるともう遠慮してはならない。
という事で、また飲ませてもらったが、 またあっという間に飲み切ってしまっていた感じだったろうか。この時だったろうかと思うけど、僕はすっかり忘れてしまっていたけれど、彼がちょっとした昔話をして思い出させてくれたよ。
まだ小学生の頃だったろうか、山村の親戚の祝い事に参加していた時に、僕や彼も大人と一緒に飲みまくってしまっていた様なのだ。彼は、後から何だか吐き気などを感じる様になっていたらしいが、僕は翌日になっても平気でいたらしく、何だか驚かれていたらしい。
そんな事を聞かされて、そういえば、そんな事もあったのかななどと何となく思ったりしてしまったけど。

そして、その様な事でも話が弾んでしまうものだから、飲もうという意識は互いに高まっていき、ビールの次には今度は日本酒を飲もうと、突然に彼が言ってくれるではないか。
何だか嬉しい反面、余り贅沢をさせられてもいけないと思い一応この時も遠慮するのだが、すぐにコップ瓶の日本酒を温めて持って来られては、もう断る事なんて出来やしない。彼もこの僕のこの気持ちは分かっていたのだろうか。
この時も、コップ瓶で乾杯して、日本酒を思いっきり飲ませてもらったよ。
この頃だったろうか、彼が突然に「泊まっていきや」と言い出したのは。言ってくれるのは嬉しかったが、弟を先に帰してしまうと、僕には帰る方法が無くなってしまうし、彼が言い出した直後に弟も「3日に迎えに来ちゃる」なんて、また突然に言ってくれたけど、そうすると弟の正月休を無くしてしまいかねない。ちょっとという事で、この時は断ってしまったけど。だが、もし断っていなかったら、どうなっていたのかな、とも思えない事もない。

その後も日本酒は進んでいったが、甘口のタイプと辛口のタイプがあったけど、どちらも本当に上手かった。
上手い酒をタップリと味合わせてくれた彼には、本当に感謝しているよ。だが、遂にはこの日本酒に負けてしまったのだろうか。いつの間にやら完全に酔ってしまった状態となってしまっていた。
その時に、これ以上飲ませない方がいいと判断してくれたのだろう。彼とおばさんに戻る事を進められて、僕も軽く別れの挨拶などをしながら弟の車に向ったけど、もうフラフラの状態だったよ。
そして、僕達が彼の実家を離れる時、おばさんと一緒に彼が見送ってくれている事を覚えている。

だが、彼と最後まで飲み切る事が出来なかった事が悔しくて、車の中で何度も叫んだりしてしまっていたけれど。だけど、彼との再会は、本当に楽しかったし、嬉しかった。本当に再会して良かったと思う。


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