僕の生まれは高知市だ。高知の中心都市である。周囲には山があり海がありと、自然に囲まれているとこではあるが、
子供の頃にはそのようなとこに行くのは遠足など学校の行事の時がほとんどで滅多に行く事はなかった。
友達達と遊ぶ時も道路や公園、近くの広場などへ出掛けて遊んでいたが、僕の世代の子供達の遊び場といえば、
そんなとこが当たり前だったのだろうか。といってハッキリとした事は分からないが、市街に住んでた頃の僕なんかはそんなとこでしか
遊んではいなかった。たとえ近くにあるとはいえ、わざわざ山や海へ出掛けていって遊ぶという事はしていなかったと思う。
近くに海などがあれば別だったかもしれないが。
小学5年の時だった。家の事情で生活の環境は大きく変わる事になる。
それまで暮らしていた街中とは全く異なる山村へと移り住む事になったのだ。突然の事だった。
それまでまだ一度も行った事のなかった場所へ移り住む事を知った時は驚きと同時に、幾ばくかの動揺あるいは不安を持っていたと思うが、
完全に引っ越す前に準備の前に連れて行かれた時に、気持ちはどんどんと変わっていった。
移り住む事が楽しみになっていっていたのだと思う。山村に初めて入って見た物がというよりも雰囲気が、それまで暮らしていた
街中とは全く異なっていた。それが衝撃的だったのだろうか。連れて行かれた家の一つには大きな萱葺きがあって、
そこには使い込んでいる囲炉裏もあった。どのように感じ取ったのかハッキリとは覚えてはいないが、街中とは異なる雰囲気とそれまで見た事のない
多くの物に魅せられてしまい、そのまま気に入ってしまったのかもしれない。
遊び方には大きな変化はなかったかもしれないが、遊ぶ場所は大きく変わった。そして、
そして遊び方も含めて大きく変わったのが夏と冬だった。夏の頃、高知市にいた頃だったら友達などと一緒に
市営プールに泳ぎに行ったり、釣りに行ったりその他いつもと同じ遊びをしていたのだが、当時の山村には、学校にもプールはなかった。
学校の授業の時でも、水泳の時には学校の前を流れる渓流で泳がされていたものだ。そう泳ぐ場所がプールから渓流へと大きく変わった。
今は決して綺麗とは言い切れないが、僕がまだ子供の頃あの川はもの凄く綺麗で、川の水をそのまま飲んでも食中毒などなく、全く平気だったのだから。
見ただけでは綺麗でも、水質が汚れていれば、きっと腹の具合は悪くなり脱水症状か嘔吐におわれていたはずだが、
そのような事は一度もなかったし、何よりあの水が美味かった事を覚えている。
そんな綺麗な水の流れる川だったから、あの頃はアメゴ(アマゴと呼んでいる地域が多いみたいだが)といった渓流魚が
そこらの流れに幾らでもいた。なもんだから、僕達男子はアメゴ釣りや捕獲に夢中になったりしてたし、
カブトムシやクワガタのよく獲れるとこがあって、友達達とよく獲りに行ったものだ。
また夜には、川原にある小さな木々にたくさんの蛍が舞う時期があって、その頃には友達と一緒に行って、
何やら会話を交えながらゆっくりと蛍達の放つ、あの光を見たりしていた。今はもうみれなくなっているが。
そして冬になれば、高知市に住んでたころの僕にとっては考えられないような衝撃的な事が起こった。
雪が降ったのだ。それも、細々と降るものではない。本格的な雪が。
街中にいる時には、雪など滅多に見れるものではなく、憧れていたものでもあったのに、どんどんと降ってくる。
降ってくる雪を手にとって受けてみたり、積もった雪を手に掴みとって、食べてみたりもしたものだ。雪合戦をしたり雪だるまを
作ったりして遊んだりもした。
だが雪の降ってる時はもの凄く寒くて、傘をさして学校へ通ってる時などは、手が赤くなっていたものだが。それでも、
雪が降り出すと喜んでいた事を思い出す。
山村で家のあった集落にあった店は、農協も含めて3軒だけだった。街中で暮らしてた時のように、
スーパーなど色々な店が近くにあるのではなく、暮らしは決して便利なものではなかったかもしれないが、自然の中に入り込んだ生活は
僕にとってはとても心地よいものであった。
だが、あの山村も僕が移り住んだ頃と比べれば、大分変わってしまったが、今でも一年に一度位帰った時には、とても落ち着いた気分にさせてくれる。
いまでも、昔と同じで街中のように何でも揃ってるというとこではないのだが、今でも静かでゆったりとした雰囲気を持っている。
昔の子供の頃が懐かしく思えてくる。